Episode 08
機械式時計に命を与えるエンドミルの話。
時間に追われる現代に改めて見直される機械式時計。
時計の針が午後3時を指したら、おやつの時間。でもなぜ、おやつと言えば3時なのでしょう?起源は江戸時代の時刻制度「不定時法」に遡ります。不定時法とは、日の出およそ30分前を「明け六つ」、日没30分後を「暮れ六つ」とし、その間を2時間おきに6つに分けて表示するもの。一日2食だった当時、小昼という間食を「昼八つ(現在の午後2時から4時頃)」に摂っていたことから「おやつ」と呼ぶようになりました。なお、江戸時代は1時間を半刻(はんとき)、30分を四半時(しはんとき)とし、それより細かな時間の表示はなかったそう。現代の感覚からすると、ずいぶんゆるやかな時の中で江戸の人々は暮らしを営んでいたのですね。時代を超えて、今や世界でも特に時間に厳しいと言われる日本人。
日々、一分一秒に追われるなか、改めて価値が見直されているのが機械式時計です。電池を使わず、ゼンマイを動力として細かなパーツと歯車が噛み合い、チクタクと時を刻む造形美。正確さだけを求めるなら、電池で動くクォーツや電波式時計には叶いません。また、コンディションを維持するために定期的なメンテナンスを要するなど、持ち主に少なからぬ手間を強います。しかし、直径わずか数センチのケースに込められた技術や伝統に敬意を抱き、それを日用品としてでなく芸術品として身につける行為にロマンを感じるからこそ、人々はこの便利な時代に機械式時計を選ぶのでしょう。
スイス機械式時計、その伝統を未来へ。
日進工具は、そんな機械式時計の製造にも一役買っています。機械式時計は数百もの精密部品が寸分の狂いもなく正確に噛み合って時を刻むからこそ、個々のパーツに究極の精度が必要不可欠。その本場であるスイスを代表するブランドが、ムーブメント製作のための理想の工具を探し求め、世界中から選んだのが私たちのエンドミルなのです。
電波時計やスマートウォッチの登場など、テクノロジーの進展とともにより正確に、より便利になっていく時計。今はまだカタチになっていない技術の実現に貢献することはもちろん日進工具の大切な仕事です。しかし、16世紀から続くスイス機械式時計の伝統を支え続けること。そして親から子へ、子から孫へと世代を超えて受け継がれる一本をこの世に送り出すこと…。それもまた、エンドミルに課せられた使命だと私たちは信じているのです。
当サイトで、全8回にわたりご紹介してきた「NS TOOL Innovation Stories」。
分野を超えて夢の実現を支える私たちの取り組みは、これで終わりではありません。
社会を変えるかもしれない誰かの発想を、世界を驚かすであろうその閃きを、
また一つカタチにすること。日進工具は最先端の先を行くエンドミルの創造に挑み、
日本のモノづくりの未来に広がる無限の可能性を切り拓いていきます。