モノづくりニッポンが挑む
「精密・微細加工」
株式会社 狭山金型製作所
代表取締役 大場 治 さん
「トトロの森」としても知られる狭山丘陵にひっそりと佇む工場へ世界の視線が集まっています。狭山金型製作所は、パソコンやデジタル機器、自動車などの精密パーツをつくるための金型に特化した、微細精密金型製造のトップ企業。大きな桜の樹が印象的な本社工場に、代表取締役 大場 治様を訪ねました。
株式会社 狭山金型製作所
1964年創業/埼玉県入間市
精密成型用金型の設計・製作、精密成形品製造、微細部品加工および金型・成型技術のコンサルティングを手がけるプロフェッショナル集団として、世界各国へメイド・イン・ジャパンの品質を提供。
狭山金型製作所は、他の金型メーカーでは真似できないような微細なモノづくりを実現する金型製造で世界的な企業からも高く評価されていますが、貴社の強みは何だと思われますか?
よく「なんでできるの?」って驚かれるんですよ。例えば、スイスにある世界的な某時計メーカーが新しい製品を開発するのに、自分たちの技術ではどうしても作れなかったパーツがあって、それでうちに話が来たんだけど、ぱっと作れちゃって。すごく驚かれたんですけど、なんでできるのかと聞かれても答えはわからない。だって、それがウチでは普通のことだから。
正直、自分たちの強みがこれだって、言い表せないんです。仮に高度な技術マニュアルがあったとして……でも、それを使ってもうちの仕事はできない。今、世の中にないモノは、今ある技術では作れないわけで、だからみんなで考えながらつくるんです。あえて言えば、チャレンジし続けることがうちの強みでしょうか。できるまで挑戦する、そういう社風があるんです。
どのようにすれば、そういう社風をつくることができるのでしょうか?
大切にしているのは、社員それぞれの個性を伸ばすということです。自信を持ってチャレンジしていってもらえるよう、自分を磨いてもらいたい。3ヶ月に1回のペースで実施している全員研修も「自分の強みって何?」「自分にとって仕事って何?」というような人間性を高めるための内容に終始しています。よく就職希望の方に「どんな資格が必要ですか」と聞かれるんだけど、別に資格は問わないんです。例えるなら資格はアプリケーションですが、OSである人間性のほうが遥かに重要だから。大切なのは、機転や想像力といった人の可能性だと思うんです。
新入社員には技能を持ってから仕事してもらうのではなく、仕事をしながらその取り組みの中でどうすれば実現できるのかを考えてもらうようにしています。カリキュラムがないから天井がない。どんどん伸びる。実際、理系でも技術畑でもない新入社員が、わずか数年で先進的な金型づくりをこなしたりもしています。自ら挑戦する気持ちさえあれば、新しい領域を広げることはできるはずなのです。
うちが目指しているのは、小さいけれど強くて大きいことを成し遂げられるグレートスモールカンパニー。大きな企業では得られない、やりがいや働きやすさを感じてもらいたい。社員のみんなには、一緒に富士山の頂上を目指そうって言っています。
世界的な企業に認められるというのも、大きなやりがいにつながっているのでしょうね。
世界を席巻した某CPUメーカーでは、CPUの最終検査をすべてうちの金型でつくった装置を採用していました。さまざまなデジタル製品に用いられるCPUは、ときには人の命に関わるようなこともあります。その重要な製品の検査に使われるわけですから、我々の責任も重大ですし、やりがいにも、誇りにもつながります。
携帯電話の各種パーツ、デジタルカメラのバックライト、腹腔鏡手術に使われる鉗子など、当社の微細精密金型はさまざまなモノづくりを支えています。世の中の「こういうモノがあったらいいのに」という絵を実現するのがうちの金型なんです。
微細加工は、今後も社会の発展に大きく貢献していくはずです。1g軽くする、1mm小さくするという挑戦の積み重ねが、製品の軽量化や消費電力の削減をもたらし、モノづくりのイノベーションを実現します。そういうことに携わっているというのが私たちの誇りです。
当社の仕事は、お客様の期待を超える金型を提供することであり、お客様の想像を超えた提案をすることです。金型メーカーは、サプライチェーンでは“下請け”と呼ばれる位置にいますが、正直、お客様のご要望にただ応えるだけの仕事に魅力は感じません。お客様になくてはならないイコールパートナーとして、社会の夢をお客様と一緒に実現していくことを目指しています。
今後の微細加工の可能性についてお聞かせください。
現代の便利さを失わず、より豊かに暮らすために、微細加工はその可能性の重要な部分を担っています。医療の発展にも大きく貢献するし、省エネや再生可能エネルギーの分野でも活躍することでしょう。今の環境を100年先、1000年先の社会に残すために大切な役割を果たすはずです。
日本のモノづくりに元気を取り戻すためにも、微細加工の技術は重要です。埋蔵資源の乏しい日本ですが、最大の資源と言えるのが人材と知恵。素晴らしいエンドミルを供給してくださっている日進工具さんもそうですが、頂点を目指そうという日本の力を結集して、切磋琢磨しながら世界のさまざまな課題を解決するモノを創り出したい。その実現は、大げさではなく各地で頻発する紛争の解決などにもつながり、世界平和にも貢献できると信じています。 微細加工は、世界中を幸せにできます。だから私は、まずうちの社員に幸せになってほしい。幸せな人なら、幸せな社会のことを考えることができるはず。厳しい要求にも頑張れる。やり遂げられるはずです。人が伸びることが技術の進化を生みます。狭山金型製作所は、そういう人を育てられる会社でありたいと思うのです。
(2019年10月取材)
日進工具は、微細加工技術の
最先端に挑む人達を応援します。