Episode 06
カメラの進化を支えるエンドミルの話。
カメラの語源は、ラテン語の「Camera(小さな部屋)」。
古代ギリシャの人々は、壁にあいた小さな穴からの入射光で室内に外の景色がさかさまに映ることに気付きました。このピンホール(針穴)カメラの原理の発見が、カメラの歴史の始まりです。16世紀頃には、箱の中に穴の代わりにレンズをつけ、反射鏡を組み合わせた「カメラ・オブスキュラ(小さな暗い部屋)」という装置が誕生。映ったものをなぞることで、本物そっくりの風景が描けると画家たちに重宝されました。感光材料を用いて風景の「記録」が初めて実現したのは1826年。人類はその歴史の中で、目の前に映る現実をリアルに残そうとトライし続けてきたのですね。
SNSでの写真投稿が花盛りの現代。スマートフォンで誰もが一眼レフ顔負けの写真が簡単に撮影できるようになりました。その革新を支えてきたのが、レンズの小型化・薄型化。筐体のスリム化が進む一方、いまやほとんどのスマートフォンには5枚以上のレンズが格納されています。レンズを保持するのはマイクロレンズユニットと呼ばれる部品ですが、レンズを寸分の誤差もなく組み込むためには、ユニットの金型には高い精度が求められます。レンズ性能を設計値に極限まで近付け、美しく、光のずれや歪みのない撮影を可能にするために、このユニットの金型づくりに日進工具のエンドミルが採用されているのです。
カメラの未来にフォーカスを合わせて。
スマートフォン用に限らず、日進工具はカメラと深い関わりがあります。私たちのエンドミルは、古くから一眼レフカメラのレンズを収める鏡筒の金型製作に用いられています。滑らかな回転やスライドによって、絞りやズームを思いのままに操作する。様々な場所や気象条件の中で埃の侵入を防ぎ、10年20年と機能を保ち続ける。プロカメラマンや本格的な写真愛好家の厳しい要求に応え、日進工具はレンズ性能の進化と撮影品質の向上に貢献してきました。
愛しい人の笑顔、ペットのキュートな仕草、次にいつ見ることができるか分からない絶景。彩り豊かな私たちの日々は、記憶にとどめたい一瞬の連続でできています。時計の針は止められなくても、「今」を記録し、その瞬間の空気や会話を色鮮やかに思い出すことができます。10年後20年後、写真やその楽しみ方はどのように進化しているのでしょうか。いつか、脳内でダイレクトに記憶を再生できる夢のカメラだって実現できるかもしれません。誰もが驚くような未来の実現に、エンドミルを通じて貢献するために、日進工具はこれからもたゆまぬ技術革新に挑んでいきます。