Episode 02
人工衛星をタフにした、エンドミルの話。
強度向上の鍵は「一体成型」にあり。
地球から36,000km離れた軌道で気象データを取得する「ひまわり」。ナビや携帯電話のGPSに欠かせない測位衛星「みちびき」。そして、宇宙探査目的の「はやぶさ」や「あかつき」。今日も様々なミッションを持った人工衛星が遙か上空を飛んでいます。しかし、衛星がその任務を全うするためには多くのハードルを乗り越える必要があります。まず、打ち上げ時やロケットから分離する際の強烈な振動・衝撃。たとえば、小型軽量とされる「あかつき」でも重量は約500kg。打ち上げ時の加速度は10Gから20Gに達し、5~10トンもの力が機体に加わることになります。さらに、宇宙空間にはソフトウェアにエラーをもたらす高濃度の銀河宇宙線や放射線が存在するほか、太陽が当たる面と当たらない面で200℃以上の温度差が生じます。こうした過酷な環境から衛星内部の精密部品を守り、正確に作動させ続けるために機体には高い設計強度が求められます。そこで、衛星の構造材となるアルミ材の切削に採用されたのが、日進工具のエンドミル。これまで一体部品として成型することが難しく、数点のパーツを繋ぎ合わせて製作せざるを得なかった「ある部品」。私たちのエンドミルと納入先のお客様のすぐれた加工技術の融合により、一体成型に成功。軽量というアルミの特性を活かしたまま、いっそう強度を高めることができたのです。
宇宙の真逆、深海探査の進化にも貢献。
空の上だけでなく、エンドミルは宇宙以上に謎に満ちた深海の探索にも役立っています。深海生物資源の研究や地殻プレート変動のモニタリングなどを行う深海探査艇。水深10mごとに水圧が1気圧ずつ増える海中で、高圧力に耐えるための構造材の「水密性」向上に私たちの工具が貢献しています。さて、日進工具はお納めした工具が「何に・どのように」使われているかを全て把握しているわけではありません。とりわけ、宇宙開発分野は機密中の機密。カスタムメイドで製作し、お納めしたエンドミルの用途を知ったのもずいぶん後のことでした。それにしても、私たちは誇らしく思うのです。空を見上げれば、今夜も輝く星たち。もしかしたら、そのきらめきのひとつは日進工具のエンドミルが携わった衛星かもしれない、と。