Episode 03

「環境」の先をつくる

地球と自動車の深い溝を埋めよう。
燃料電池を「溝」から革新するエンドミルの話。

観測史上最小を記録した、海氷面積。

北極海を覆う海氷は冬に最大になり、一方、南極大陸を取り巻く海氷は夏に最も小さくなります。その面積が、いずれも衛星観測史上最小を記録したという発表が2017年3月に米航空宇宙局(NASA)からありました。これが地球温暖化の影響によるものとNASAは結論付けていませんが、米科学誌「米国科学アカデミー紀要*1」に発表されたレポートは「海洋の温暖化による熱膨張」と「陸地の氷河の融解」により、2100年までに海面が最大で131cm上昇する可能性を指摘しています。
地球温暖化の原因となる温室効果ガスの中で、排出量が多く、環境へのインパクトが高いのが二酸化炭素(CO2)。とりわけ、石油や石炭、天然ガスなど化石燃料起源のCO2は温室効果ガス総排出量の65%*2 を占めています。家庭や企業が使う自動車、貨物車など運輸セクターのCO2排出の削減が課題となる中、その解決の担い手として期待を集めているのが燃料電池自動車です。水素を燃料として供給し、酸素との電気化学反応により取り出される電気エネルギーを、走行用モーターの電力として利用する燃料電池自動車。水素は発電時のエネルギー効率が高く、使用過程におけるCO2排出はゼロ。さらに、化石燃料のように枯渇の心配もないなど、良いことずくめのクリーンエネルギーなのです。

燃料電池の発電効率の鍵となる「溝」。

燃料電池自動車の進化の鍵となるのが、走行性能や航続距離に直結する燃料電池の小型化・軽量化と高出力化です。燃料電池で電気をつくる上で重要な役割を果たすパーツが「セパレータ」。発電に必要な水素や酸素を供給し、発電後に発生する水を排出する溝(流路)が刻まれていますが、筐体をより軽く、コンパクトにし、なおかつ発電効率を高めるためには、この溝の断面積を小さくして流路長をできるかぎり伸ばす必要があります。そこで課題となるのが、セパレータの原型となる金型の溝をいかに細く長く、そして精緻に刻めるか?ということ。その解決に「摩耗に強く、折れにくい」特長を持つ、日進工具の切削用工具エンドミルが貢献しているのです。
この小さな工具が環境問題の前進に大きなインパクトをもたらしている。私たちはその誇りと情熱を燃料に、これからもエンドミルの革新に挑み続けていきます。
*1 Proceedings of the National Academy of Sciences *2 工業プロセス起源を含む IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第5次評価報告書

 

日進工具株式会社