Episode 04
みんなの健康を見守るエンドミルの話。
人間五十年?人生五十年?
「人間五十年 下天のうちをくらぶれば 夢幻の如くなり」とは、織田信長が好んで演じ、桶狭間の戦い前夜にも謡い舞ったとされる幸若舞の演目『敦盛』の一節です。長生きが難しかった時代と現代を比較するたとえなどで「人生50年」と用いられますが、これは誤り。本来は「人間の世の50年は天の流れに比べれば、幻のように一瞬だ」という意味です。しかし「人生50年」と表現したくなるほど、かつての日本人の生涯は短く、儚いものでした。最も古い公表データによると、1891年-1898年(明治24-31年)の0歳児の平均余命は男性42.8歳・女性44.3歳*1。男女ともに初めて50歳を超えたのは1947年のことです。
生まれ年の干支に還ることを祝う還暦をはじめ、日本には多くの祝い歳があります。古希の語源は「70歳まで生きることは古来まれ(希)」というもの。医薬の発達が充分でなかった時代に、長寿はとてつもなく価値あることだったのです。現在、満70歳の人の生存数(率)*2が男性82.9%、女性91.7%に達する長寿大国・日本。百寿、茶寿を目指して、生きる喜びを日々大切にしたいものです。
様々なカタチで医療の進歩に貢献するエンドミル。
2017年3月の公表で、日本人の平均寿命は過去最高を更新しました。しかし、病や怪我に苦しむ人がいる限り、医療の進歩に終わりはありません。一層の診断精度や治療技術の向上を担うのが、医療機器の革新です。たとえば、MRI。日進工具のエンドミルは電子部品の高精度な切削加工を可能にし、MRI内部で生成される磁場を均一化。大幅な高画質化を実現し、より確度の高い画像診断を可能にしました。さらに、重粒子線がん治療時に患者さんの病巣の形に合わせて、ビームの到達距離を調節する「ボーラス」の成型や、内視鏡をより体に入れやすくするための改良など、私たちの製品は様々なカタチで医療のブレイクスルーに貢献しています。
さて、WHO(世界保健機関)は「健康」の定義を“単に病気や衰弱をしていないだけでなく、肉体的・精神的、そして社会的にも満たされた状態”としています。人間には家族や友人、知人らとの豊かな社会的つながりがあり、心身に加え、その環境も平穏であってこそ「健康」と言えるのです。病気や怪我をした人の周囲には、その人を気づかう多くの人たちがいます。すなわち、一人を治すことは、みんなを「健康」にすること。笑顔でつながる人の縁と絆を守るために、日進工具はエンドミルを研ぎ澄まし、日本の医療現場を縁の下で支えていきます。
*1 厚生労働省 完全生命表における平均余命の年次推移 *2 厚生労働省 平成27年簡易生命表